63人が本棚に入れています
本棚に追加
テレビでも観ようか、とテーブルの上を見たが、リモコンが見当たらない。
「おい、ナオ。テレビのリモコンどこやったんだ? どうせここでしか観ないのに、なんであちこち持って行くんだよ」
呆れながら、秋月 拓馬は遊びに来ていた恋人に声を掛ける。
「え? 俺は知らないよ」
「いや、知らないって。今、この家には俺とお前の二人しかいないんだからさ。俺は今日まだテレビ観てないし、リモコンにも触ってない。だったらお前しかいないだろ」
まるで幼児を諭すような、言い聞かせるかのような秋月の言い方に余計に気分を害したらしく、本橋 直が噛み付かんばかりに喚く。
「俺だって、今日ここに来てからテレビなんか観てないよ。だからリモコンも触ってない、絶対!」
秋月は、フーフーとまるで猫のように、見えない毛を逆立てているかのような本橋に気圧されつつも、引き下がる気には毛頭なれずに、威勢よく言い返した。
「それならなんでここにないんだよ! お前、いつもそこらへんにポイっと置いとくだろ! 前科あり過ぎなんだよ。とぼけるな!」
「だ、か、ら! 俺は、知らない! 今日はホントに知らないから!」
どちらも一歩も譲らず、睨み合ったまま勢い任せの言葉の応酬を続けた。
最初のコメントを投稿しよう!