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第2話 翔太、空を飛ぶ
さわさわと音を立てる黒い影となった竹やぶのすき間からるり色の夜空がのぞく。
通行止めの低い柵の前に立ち、月の光をあびた宝蔵をふり返る。
ここから、なにかを盗みだしたのだろうか?
いや、さすがに、それはないだろう。
昔ならともかく、今の時代に、木で組まれた蔵に宝物を置いたりしないだろう。
――だとすれば、あの人間は、なぜこんなところにいたのだろう?
柵の向こうで、ペケがおちつかないようすで鼻を鳴らしている。
どうやら、さっきの人影は見失ったらしい。
ペケは、杉の木の根元のすき間から細々と立ちあがっている小さな木を見あげていた。
高さは翔太の身長と同じぐらいだろう。
杉ではないことは一目でわかった。葉っぱが、広葉樹の形状をしていたからだ。
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