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その昔、このあたりに住んでいた、がんぼうと呼ばれる子どもが、この神社の境内にあった赤い実を食べて、空を飛べるようになったという言い伝えだ。
その話が本当だったら――男の子ならだれもが一度は夢見たにちがいない。
――だが、ありえない話だ。昔話だ。
人間が空を飛べるわけがない。
それに、これはどう見てもりんごの実だ。
しかも、毒々しさとは対照的なみずみずしさだ。
最近は品種改良で次々新しいものが店頭に並んでいる。
春に実のなるりんごだってあるかもしれない。
少なくとも、りんごに似た毒の実があるなんて聞いたことがない。
翔太は自分に言い聞かせ、一口かじってみる。
あまずっぱい味が、口いっぱいに広がった。
「うん」
うなずいて、もうふた口ほどかじりながら拝殿に向かう。
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