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細野刑事が、にやりと笑う。
「……どうやら、君には、ずいぶんいろいろとしゃべっているようだな――ちょっかいを出していた暴力団の構成員がつかまったことで、妻の実家の態度も軟化してね」
思わず、自分の着ている服や炭でよごれたスニーカーに目をやる。
それに気づいた細野刑事は、笑いをこらえるように続ける。
「お茶会は、うちでやる。安マンションの方だ」
「あっ……はい!」
石段をおりる細野刑事は、明らかに左足をかばっていた。
人に言えないケガだ。
「あの夜、なぜ、ここにいたんですか?」
翔太の質問に足を止め、ふり返ることなく携帯用のケースにタバコを放りこむ。
「ピアノのレッスンでおそくなる日だったからね」
離婚はしても、見守っていたらしい。
いや、きっと、会う約束をしていたのだ。
「待っていたら、目の前に木津根の家があった?」
思わず、口をついて出た。
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