第1話 あやしい人影

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先生は、夜でもダメだがな、と苦笑しながら続ける。 「それにしても、いつから、そんなに気をつかうタイプになったんだ?」 「なるべく、もめごとはおこさないようにと決めたんです」 「ほーっ。成長したな」 「何年か後に、先生から、おれの出世のじゃまをしたな、って言われたくないですからね」 言い過ぎたかと思ったが、先生は笑いだした。 「後悔するなよ! 今言ったこと。明日の授業ではバンバン当ててやるからな」 「あーっ、ひどい! パワハラていうんじゃないですか? そういうの」 「人聞きが悪いな。愛のムチってやつだ。目上の人をからかうと、ろくなことがないってことがわかるように、な」 「ちぇっ! ……でも、まあなんとかなるか。明日は、得意な科目ばかりだし」 「おう、いい度胸だ。しっかり予習しておけよ、がんぼう!」 がんぼうというのは、このあたりの方言で、がんこな子どもという意味だ。
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