追憶

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「知ってたわよ、お墓参りのことは」  重苦しい雰囲気で告げる彼の言葉とは対照的に、その女の口調は実にカラッとしたものだった。 「毎年、決まってお盆時期は一人で過ごすんだもの。不自然過ぎるでしょ。だからお義母さんに聞いて訳を教えてもらったの。私が知りたいのは、どうして今年に限って私を連れてきたのかってことよ」  その女は怪訝そうに眉をひそめた。 「過去は過去。大事な思い出なんだから、一人で偲んでいればいいじゃない。別にそんなことにうるさく言うタイプの女じゃないわよ」  見た目の印象通りサバサバした性格のようだ。  私はきっとそのように思うことは出来ない。確かに過去は消せないが、その過去を塗り替えるほどに愛し、愛されたいと願ってしまう。独占欲の強い女なのだ。 「一人で偲ぶのもいいけどさ。亜弥も瞳も、二人とも俺にとって大事な人なんだ。だったらお互いにきちんと紹介しても良いんじゃないかと思ったんだ」 「そうね。……でも、事前に一言くらい欲しかったわ。心づもりとかあるんだから」  そう言うと、その女も墓石の前にしゃがみ込んで両手を合わせた。
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