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宅配便
この物語は、近未来を描いている。
令和の頃と比べるとこの街はずいぶんと変わり果ててしまった。
令和の頃は、まるで縮小された地図のように、細々とした家が密接していたのだが、数々の自然災害を繰り返し、住民たちの住む家は少しずつ離れた場所に設置された。
ーーもしもの災害時、被害を最小限に抑える為に。
しかし、その為に埋め立ててしまった場所も多く、それが二次災害に繋がらないか。そんな不安を抱いている住民もいる。
そんな風に家を離して暮らし始めた事で、自然とご近所さんとの付き合いも、減っていったらしい。
そんなある日。
僕の元に大きな荷物が届いた。
僕の背丈ほどもある大きな荷物だった。
荷物が入った箱の上によじ登ると、宛名が見える。
「斎藤司さま」
僕宛の郵便である。
とても重そうだ。まだ子供の僕にはそれを受けとる事も、持ち上げる事も出来ない。
「ーーここに置いといてください」
僕はそう言って、受取人のところに名前を書いて、配達員に渡した。
ーーなんだろ?僕に届いてる。
興味心でいっぱいになっている僕の脳裏に、呪文のような母の言葉が繰り返されている。
毎日の様に、母が言っている言葉。
「知らない人が来ても、玄関を開けちゃダメだよ」
とか、
「郵便とか宅急便は受け取っといて」
とか。。
ーー矛盾してるな。
僕はそう思っていた。。
アパートに住みながら、閉ざされた閉鎖空間とでも呼べる程、近所との付き合いもなく、周りで何が起こってもわからない。
そんな生活に、僕ら一家は埋もれていた。。
閉ざされた閉鎖空間である我が家に、荷物を届ける様な物好きは、滅多にいない。
それなのにーー。
僕に届いた始めての僕宛の荷物。
中身は何だろう。
勝手に開けたら、お母さんに怒られるだろうか?
体が勝手に動いてしまう。
段ボールの上までよじ登り、何とか僕はガムテープを外し、その荷物を開けた。興味心がもうどうにも抑えられなかった。
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