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「亜紀のこと、宜しくお願いします」 時任さんの声は、真摯に響いた。 なにか、託されたような気持ちになった。 夏菜子ちゃん、と片山が嬉しげに呼ぶ彼女の親友に初めて会った。 艶やかな黒髪で、片山よりも小柄で、やや気配の鋭い美人だった。 仕事終わりに駆けつけてくれたらしい時任さんを玄関で見送って部屋に戻っても、片山は相変わらずぐっすりと眠っていた。 俺が電話した時にはすでに眠っていた。それからかれこれ… 3時間弱、時任さんとピザを食べてビールを飲んで話している間も一度も起きず、大丈夫なんだろうかと心配になる。 まぁ、直前に解熱剤飲んだらしいから…… 布団からはみ出ている額に手を当ててみる。汗で湿っぽく感じるけれど、その奥はまだ熱いような気がした。 たぶん、寝汗すごいだろこれ。できれば着替えさせたいけど、ぐっすり寝ているのを起こすのも忍びないし。 これほど弱っている片山を初めて見た。いつもめちゃくちゃ働いているし、バド部という以外なほどきつい部活にきっちり参加していたし、たしかに生活はぼろぼろきみだけど、体は丈夫なほうなんだと思っていた。 いつもの発熱だって、時任さん言ってたな。 片山の、いつもの、これまで何度も繰り返してきている体調不良を俺は全く知らなかったし、知らされもしなかった。 本当に、色々と隠されていることが、他にもあるんだろうな…… カニが嫌いだとかもさ、秘密にする必要あるのか?この人、実は、ばかなんじゃないのか? ぐったりと枕に沈んでいる片山の顔を見る。汗で頬に張り付いている髪を、剥がして耳の方によけた。
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