4/4
前へ
/885ページ
次へ
「いや、食べれなくないし」 「食べれなくはないけど、好んで食べないよね?」 「まあ……1人だとね」 片山はこちらを睨みながらため息をつく。 「なんでそういうの、言わないの。私けっこう、連れ回しちゃったじゃん」 「連れ回されてないよ。ほとんど俺が決めて、連れてったんじゃん」 「そう、だけど。城崎くんも好きなのかと思ってたから」 彼女は拗ねたように、両膝を抱えている。 「いいじゃん。片山と行くのは楽しかったし、嫌じゃないし」 片山はけっこう、甘いもの好きだ。それは割と最初から分かっていた。 彼女が部屋に来る時の手土産に、ケーキやらプリンやら選択されていたし、よくコンビニスイーツもチェックしてるなと思ってた。 彼女が好きなものに付き合うのはやぶさかでないし、全然構わないのに。 「そんなさー、合わせてもらうのもなんだかさー」 なんでこんなことで怒るんだろ 少しふくれっつらの片山の頭を引き寄せる。 「気にしなくていいのにな」 「でも、付き合って一緒に食べてたでしょ」 「まぁ、そうかな」 「そんなことしなくていいのにさー」 抱えた膝に、顎を埋めるように、彼女は半ば顔を隠す。 「城崎くんはちょっと、優しすぎると思うんだよ」 そんなことを、真面目な顔をしていうから少し、笑ってしまった。 別に俺が、優しいわけではないんだよ、と。
/885ページ

最初のコメントを投稿しよう!

448人が本棚に入れています
本棚に追加