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「いや、食べれなくないし」
「食べれなくはないけど、好んで食べないよね?」
「まあ……1人だとね」
片山はこちらを睨みながらため息をつく。
「なんでそういうの、言わないの。私けっこう、連れ回しちゃったじゃん」
「連れ回されてないよ。ほとんど俺が決めて、連れてったんじゃん」
「そう、だけど。城崎くんも好きなのかと思ってたから」
彼女は拗ねたように、両膝を抱えている。
「いいじゃん。片山と行くのは楽しかったし、嫌じゃないし」
片山はけっこう、甘いもの好きだ。それは割と最初から分かっていた。
彼女が部屋に来る時の手土産に、ケーキやらプリンやら選択されていたし、よくコンビニスイーツもチェックしてるなと思ってた。
彼女が好きなものに付き合うのはやぶさかでないし、全然構わないのに。
「そんなさー、合わせてもらうのもなんだかさー」
なんでこんなことで怒るんだろ
少しふくれっつらの片山の頭を引き寄せる。
「気にしなくていいのにな」
「でも、付き合って一緒に食べてたでしょ」
「まぁ、そうかな」
「そんなことしなくていいのにさー」
抱えた膝に、顎を埋めるように、彼女は半ば顔を隠す。
「城崎くんはちょっと、優しすぎると思うんだよ」
そんなことを、真面目な顔をしていうから少し、笑ってしまった。
別に俺が、優しいわけではないんだよ、と。
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