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3
今までの彼女は、まぁ全員ではないけれど、どちらかと言うと、わがままを聞いて欲しいタイプが多かった。どれだけ自分に合わせてくれるかで愛情を測ろうとするような。
それはそれで、間違っていると言うつもりはない。
それはそれで、非常に女の子らしいと思う。
「俺、姉がいてさ」
「お姉さん?」
「しかも、学生時代、父親は単身赴任で。だから、家の中は母親と姉と俺なわけ」
「うん」
「そう言えば、片山って兄弟いる?」
「いない、一人っ子」
「じゃあ、いまいちピンとこないかもしれないな。姉と弟の関係て、絶望的に絶対的なんだよな」
不思議そうな顔をしている片山に、苦笑を返す。
「しかも父親もいないだろ?家の中に味方なんていないからな、1番下の弟なんてもう、下僕だよね」
「下僕……?」
「買い物の荷物持ちなんて日常だし、どっか行きたいから車出せとか、付き添えとか、飲みすぎたから迎えに来いとかなー」
片山が目を大きくして驚いている。
「あ、でも別に、仲悪いとかじゃないけど。うちの姉が特別ひどいってわけでもなくて、多分、姉弟ってこんなもん」
「そうなんだ」
「一人っ子だと全然分かんないだろ」
「分かんない」
実情はもっと生々しくて、ストッキング買ってこいくらいなら生易しくて、帰りに生理用ナプキンと頭痛薬買ってこいだとか、十代のうちは羞恥で死ぬかと思った。
ただ悲しいかな……人間は慣れてしまうんだなぁ……二十歳を超えたあたりでなんかもう、すっかり慣れて動揺もしなくなってしまった。
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