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困ったなぁ、と最愛の彼女の頭を撫でる。
困ったねぇ、と。
「じゃ、今度から、片山が美味しそうにスイーツ食べてるの、見てるよ」
「スイーツ食べにいかなくてもいいんだよ?」
「俺、コーヒーは好きだから、大丈夫」
もっとわがままを言ってくれていい。叶えられる望みが、たくさんあると嬉しい。
そう思うのに、彼女から要求されることはほとんどなくて、求めるのは俺ばかりだ。
会いたいのも、部屋に来て欲しいのも、こうして抱きしめていたいのも、全部俺の希望で。
彼女は本当は何が好きなんだろうと、いつも考えている。
「じゃあ、今度は、城崎くんの行きたいところに、私も一緒に行くから!」
なにやら必死、という感じで片山が言う。私に合わせて、なんて、全然主張しない片山が。
じゃあ、ってなんだろ。行きたいところなんか何にも言わないくせに、と苦笑しながら、気に病みそうだから一応、提案する。
「したら、フェスとか行こうか」
「フェス?」
「野外フェス。行ったことある?」
「ない」
「暑いけど、今度一緒に」
片山が嬉しそうに頷く。いわゆる「彼女」と言う存在に、自分に合わせてもらうと言うのが俺にとっても新鮮で、なんだか気恥ずかしかった。
「片山の行きたいところにも、一緒に行きたいけどな」
そう、取り敢えずは言ってみる。でも、片山は自分の希望を考えたり伝えたりするのがひどく下手で、だからあんまり期待してなかったんだけど。
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