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つつがなくその日の業務を終わらせて職場を出る。今日も顧客先をたくさん回って疲れたし、帰って何か作る気もなれないし軽く食べていくかなとつらつら考えながら、ちらりと今朝見かけた彼女が入っていったビルに目を向ける。
あの時間に駅からまっすぐ向かったなら、勤め先の可能性が高い、けど……
たくさんのオフィスがおさまっている典型的なオフィスビルで、片山だったかもしれない彼女の所属先は予想もできない。
連絡先もわからない、探せない。
そもそも人違いじゃない確信もない。
たぶん、見間違え……
そう思って、そう言い聞かせて、つい立ち止まっていた足を動かし始める。お疲れ様です〜と、見知った顔に追い抜きざまに声をかけられて、あ、お疲れ様です、と慌てて返した。
もう一度、諦め悪く、ビルの出入り口を見やる。
当然ながらそこに懐かしい顔はなくて、俺は目元を強く擦りながら、地下鉄の出入り口を目指した。
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