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「城崎、城崎、おーい!」
「あ、ごめん」
「早くメニュー見ろ。決めろ」
「あぁ……ごめん」
同僚の西山に急かされて、慌ててメニューに目を落とす。12時台のオフィス街にある飲食店はどこも、混雑していて慌ただしい。
西山は同期で、俺が春に異動してきた先の事業所にそういえばいた、というのを研修以来で久々に会った時に思い出した。同期の気安さで、よく一緒に昼食に出る。
「お前、最近ちょっと変じゃない?異動したてだから?ってもう結構経つだろ?なんか仕事悩んでんの?それともプライベート?」
「いや別に」
西山はよく喋る。
そういえばこういう奴だったなと思い出す。
さして食に興味がないため、適当に目についた定食を注文し、また店内をざっと見回す。
通勤時、休憩時、昼食に出る時など、出来るだけ周囲を見るようにしている。
あれから、あの日、きっと人違いだと思い込んだにも関わらず結局、片山と思しき人影をずっと探しているのに、一度も見つけられていない。
やっぱり全然人違いだったんじゃないのか、単なる見間違えで。
それをずっと探しているなんてストーカー気質もいいところだとげんなりしつつもやはり、どうにも諦めきれない。
職場がこの近くなら、また会える可能性もなくはない。昼だって、弁当の可能性もあるけど食べに出てくる可能性だって……あーでもこんな見渡す限り男ばっかの定食屋じゃ望み薄か。
アホらしくなって視線を正面に戻すと、変にニヤけた西山の顔が見えた。
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