フランケンシュタインの嘘

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ロクサーヌはレオンの住むガスコンの街の鍵屋の娘だった。レオンとは同い年で、高等学校で同じクラスだった。レオンはこのロクサーヌに片想いをしていた。片想いしていたのはレオンだけではない。ロクサーヌは学校で一番綺麗で可愛いと評判の女の子で、誰しも一度は彼女とのデートを夢見ると言われていた。 焼きたてのブリオッシュのような髪色をした長い髪、スプーンですくったみたいに綺麗に縁取られた小さな輪郭、ぱっちりお目々は髪色と同じでガラス玉でも嵌め込んでいるようにキラキラしていた。 学校の大半の男の子たちがロクサーヌにメロメロだった。多少わがままな振る舞いもあったが、それはお姫様のお戯れだといって彼女から何か命令されるたびに取り巻きの男子たちは犬のように喜んだ。 毎年クラス替えが行われる時期にはぴりぴりとした空気が立ち込めた。教師に擦り寄る生徒がいたり、急に心象をよくするために素直になったり、噂では教師に賄賂を送る生徒もいたらしい。教師たちは生徒が扱いやすくて楽なのだが、この時期になると、こういう煩わしいことが起こるのでいっそのこと一つのクラスにしたいと常々思っていた。ロクサーヌと同じクラスになれた者は一年間、お姫様と同じ空間にいられる名誉に浴し、ロクサーヌと違うクラスになった者は姫との間を引き裂いた教師陣を一年間恨み続けるのだった。 レオンは幸運にも高等学校での生活の最後の年にロクサーヌと同じクラスになった。三年間の学校生活の中でレオンは一年二年とロクサーヌと違うクラスだった。レオンは二年生に上がるときに、ロクサーヌと同じクラスになれるというジンクスを実行していたが、違うクラスになった。クラスが違うとわかったとき、したたかな悲しみがレオンの胸をついた。しかし、レオンの隣でロクサーヌと同じクラスになれなくて泣き崩れる男子生徒がいて、レオンはその男子生徒を慰めることに集中していたために心の傷は深くならなずに済んだ。 「わかるぞ」とレオンがいうと、その男子生徒は泣きながらレオンに抱きついたのであった。 そして、三年生になって最後のチャンスが回ってきた。神さまへの祈りを欠かさず、星に願いをかけてみたこともあった。振り返ってみるとばかなことをしたもんだ。誰しもが思うこういう青春っぽい行いは落ちてしまった恋の穴の深さに比例してより過激になっていくのだと思う。レオンの落ちた穴は底がないほど深いものだったが、落下スピードがゆっくりだったために少女のような祈りや願いでことなきを得た。
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