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「会社の近くに行ったので主人に会おうとしたら、転んでしまい助けて頂いた。お礼を言おうと後を追ったらちょうど主人と話しながら駅に向かったので知り合いかと思ったのですが、主人は誰だったか覚えてないって言うので、この方に見覚えはありませんか?お礼を言いたいのですけど。」
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相手の女性の画像を添付したメールは結婚式に来てくれた人、大学時代の友人、サークル仲間、高校の時の親友などに送信された。
暫く姉と返信を待つと、最初に返事が来たのは夫の大学時代の友人の男性だった。
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『顔は覚えててその場で話を合わせる事あるよね。何処かで見た気はするけど大学は人も多いし、何処であったか俺も覚えてない。役に立てなくてごめんね。』
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「直ぐにわかれば苦労はしないよな。」
姉はそう言って、何か分かったら連絡してくれと帰って行った。
姉も専業主婦とはいえ、忙しい。
専業主婦だからこそ忙しいと仕事を辞めてから思う様になった。
こんな事に付き合わせて申し訳ないと思った。
結婚してから夫は昼寝が出来ていいな、みたいな事を言った事がある。
確かに光が産まれて、光のお昼寝に付き添って寝る事はある。
自由でいいなと言われた事もある。
逆にいえば自由であるが故に自由はない。
自分の時間なんて1日、1時間もあればいい方だ。
休日もない、少し休憩なんて座っても直ぐに呼ぶのは夫なのに、家にいるのだから当たり前と言われてしまう。
(いつからあの人は、私の気持ちを考えてくれなくなったんだろう?)
昔はもっと思いやりのある人だったのに、とスマホを見つめた。
殆ど連絡はなくスルーされていると分かる。二人程が覚えがない、ごめんねとメールをくれた。
次の日の10時過ぎ、スマホが鳴った。
相手は夫の大学時代のサークルの後輩の女性で、結婚式にも来ていた人だった。
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「同じ大学の後輩にこんな人がいました。良く似ています。自分は少ししか会った記憶がないからはっきりと断定は出来ないですが、佐久間先輩より三年下で、多分、木田という名前だった気がします。それしか思い出せませんでした。ご参考になればいいのですが。」
『ありがとうございます。夫にその名前で確認してみます。本当にありがとうございました。』
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(木田…同じ大学で三年下の学年。3歳下。)
ハッと思い出し、社会人の時に使っていた古い手帳を菜々子は引っ張り出して、連絡先の欄を見る。そこから同じ営業部の狭山を見つけて携帯にメールを送った。
番号が変わってません様にと祈りながら。
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