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「ごめん、なる。焦り過ぎてた」
座って、そっと抱きしめる。
「しょーさん……」
「俺、なんかもー、なるのこと抱けるって思ったらいっぱいいっぱいになってた」
「しょーさん、賢いわりにホントどっかポンコツだよね?」
「言うなや、それを」
自分でも、わかってる。
お勉強こそできるけれど、自分がいろんなことを考え過ぎて肝心なところを完全に失念してしまうってこと、ほんとはすごいコンプレックスで。
逆に成親は、周囲のこと広い視界で見て柔軟に対応できるコで。
そういうトコにも、惹かれてるから。
いっぱいいっぱいになってるの、わかってて、ちゃんと空気を和らげてくれて。
「俺、しょーさんの部屋、入ったことないんだよ? 知ってた?」
「あれ? そだっけ?」
「ん。いっつもりっくんたちに掴まっちゃうから、しょーさんの部屋まで辿り着けない」
翔の腕の中で、くふくふ笑いながら言う。
いつだって、ほんとは翔の部屋で二人きりになりたいと思っていたけれど。
でも可愛いおチビちゃん達に“なる、あそぼ”なんて生意気に呼び捨てされるのが、楽し過ぎて。
「俺、姉ちゃんしかいなかったから、りっくん達がほんとの弟みたいで可愛くて」
「構いすぎだよ、もう」
「だって、あの二人に逆らえる人、いる?」
「少なくとも、我が家にはいない」
「でしょお?」
今日だって、別に親なんて一人付き添えばいいだけなのに、父親までもが“双子なんだから!”と主張してくっついて行ったのだ。
まあそのおかげで、こうして成親と二人きりになれているんだけど。
お互いの体温をさわさわと感じ合って。
やっと、雰囲気が柔らかくなったから、成親からキスしてくれて。
「……しょーさんの、部屋、行きたい」
唇が離れた瞬間の、その一言で完全に翔のモノがスイッチオン、となった。
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