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「何回も見てんだから、今更、じゃない?」
「だって……」
「だっても何も、別に、いいじゃん。男同士なんだから、裸くらい見たって」
そう言ってはいるけれど、成親は入浴剤で濁ったオレンジ色のお湯の中に体は沈めているわけで。
自分だけ、晒しているモロモロが、ちょっと恥ずかしくなる。
「しょーさんのも、俺、何回も見てるし」
「言うなや!」
「なんで? まだ、勃ってるわけじゃないんだから、ハズくないっしょ?」
まだ……そりゃ、まだ……。
とかって、意識したらヤバいんだけど?
「とりあえず、体さっさと洗って、一緒にお風呂、入ろ」
きゅるん、と黒目がちの丸い目を煌めかせて成親が言った。
その様子が、わずかに翔の下半身に刺激を与えていて。
一応、座ってるし、タオルで隠してるし、成親には見えないだろうけれど。
翔は再び目を閉じて――今度は物理的にシャンプー目に入るのを防ぐ為だけど、多分ちょっとだけそれだけじゃなく、イロイロ、見ちゃいけないモノを見ない為、ぎゅっと目を閉じる。
がしがしと、シャンプーする。
そんな翔を尻目に、湯舟の中で成親が鼻歌を歌いだした。
翔の知らない曲。
多分、自作、かな。
ギター弾いたり、ピアノ弾いたり、歌、作ったり。
成親にはそーゆー趣味がいっぱいあるから。
翔もピアノは弾けるけど、子供の頃少し習っていたくらいで。
勉強ばっかしてるから、趣味と言える程のシュミもなく、傍から見たらつまんない人間なんだろう、と思う。
でも、そんな自分を好き、と言ってくれた成親が。
こんなつまらない自分を受け入れてくれたのが嬉しくて。
全身洗って、湯舟に入る。
真正面から成親に向き合うようにして。
「だから、タオル」成親が手を伸ばす。
「るさい、隠させろ」
「じゃ、俺も隠す」
「それはヤダ」
「ずるくね?」
「なるの、見たい」
素直に言ったけれど、成親は翔をくるりと回れ右させて後ろから抱き付くようにして湯舟に沈めた。
「……あの、なるさん?」
「はい?」
「この体勢だと俺、なんも見えないんだけど?」
「とりあえず、今は裸、NGってことで」
「……なるのがずるいじゃん」
「だって身のキケン感じるもん」
「なんもしねーよ、こんなトコで」
できるわけが、ない。
「こんなトコ、じゃなかったら、するの、なんか?」
耳元で成親にそんなことを囁かれ、翔のモノが見事に反応する。
「やーだ、しょーさんのえっち」
「……お、…っまえは!」
振り返って成親を見た瞬間、キス、されていた。
触れるだけの軽いキス。
「俺だってシたいって思ってるよ、しょーさんと」
唇の僅かな隙間で小さく成親が言う。
「なる……」
「とりあえず。俺、のぼせそうだから先上がるわ」
ざば、と立ち上がりながら翔がさっきまで持っていたタオルを奪い取り、下半身を隠して翔の前から立ち去った。
しかも、去り際に綺麗なウィンクを決めて。
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