秘すれば花15

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秘すれば花15

 部屋を広く使えるようにベッドは置いていない。三つ折にした布団を隅に寄せてある。風呂から抱かれて連れてこられた薫は広げた布団に、巻いたバスタオルごと寝かされた。  薫はさっきはまともに見られなかった塁の体躯に釘づけになった。盛り上がった肩の筋肉。胸筋も割れた腹筋も彫刻のように見事だ。まだ本格的に鍛えていなくてこの体つきとは、正直自分が同じ性別でいいのかとさえ思う。そしてこの人に今から自分は抱かれるのか……と身震いした。  かぶさってきた大きな体に、もしベッドなら二人は眠れないな、壊れちゃうかもしれないし……、布団でよかったとぼんやり考えていたその時。 「今から抱くぞ」 「えっ、あっ、はい。お願いします」  面白いやつ、そう言っておでこにされたのを皮切りに身体中にキスが降ってきた。  唇は腫れるほど、風呂での愛撫でさらに赤みを増した胸も、その周りも痛いほど吸われてしまう。キスは下腹部から太ももにも。さっき達したばかりの中心はもう盛り返していて、そこにも繰り返される。  気持ちよさに目を閉じた瞬間、薫は体を反され俯せにされた。腰を上げられて臀部を両手で思いきり開かれる。四つん這いの薫のうしろの小さな蕾に唾液で濡れた舌先を入れてきた。 「し、島崎さん、だめです!そんなとこ、汚い……」 「薫に汚いところなんてない」 (こんなセリフみたいなこと、本当に言ってしまうんだな)  本心からそう思うのだ、薫の全てが愛しくて仕方がない。存分にそこを味わっていると、薫から許しを請われる。 「も……、もう……や……っ」 「うん、今度は指を入れるからな」  入浴前に薫が出しておいたジェルを垂らして指を一本ゆっくりと入れた。 「んんっ──」  ぬめりでそれほど痛みはないが、違和感が半端ない。ひと関節分入れた指を回されただけで、薫はうっと呻いた。 (あの夜ホテルで抱かなくて、ほんとに良かった……)  指一本で辛そうな薫と、すでに猛った自身を見て、あのまま知識のない自分が力ずくで抱いていたらと思うとぞっとした。  一本ずつ指を増やし、少し進めては内壁と入り口を擦り拡げていく。自分を受け入れてくれる薫の苦痛を出来るだけ和らげたい。そうしているうちに、苦痛だけではない甘い声がもれる。 「あ、……あんっ。島崎さ……んん…」  そろそろ入れてもいいだろう。指三本を抜きゴムを着けた自身を挿入しようとすると、薫が気配に振り返る。 「挿れる、んですか?」 「うん。まだ無理そう?」 「いえ、あの……後ろからじゃないと、だめなんですか?」 「え?」  挿入への不安かと思ったが、違うようだ。 「こっちの方が、楽だと思うから。どうして?」 「島崎さんの顔を見てしたい。だめですか?」  腫れぼったい目を島崎に向けてくる。  もうそんなに自分を煽るな、優しくさせてくれと思ったが、薫の表情を見ながらしたいのは島崎も同じだ。 「少し辛いぞ?」 「大丈夫です」  そう言って頷いた。  再び仰向けにされて足を開かれた薫のそこに、硬く張りつめた島崎のものを押しつけられた。その存在の大きさに、覚悟はしていても体が固くなる。 「大丈夫だから。息、止めないで。力をぬいて……」 「はい、ん、んん……っ」 「そう、上手だよ。ゆっくり入れるからね」  あやすようにして、少しずつ押し入れては止まり、また奥へと進んでいく。汗びっしょりになりながらやがて薫の中に全てを埋めた。 「全部入ったよ」 「島崎さんとひとつになれた。嬉しい」 「うん、俺も嬉しいよ」  痛みに涙を流しながらも笑う薫の顔を手でぬぐい、ゆっくりと動き出す。背中に回した薫の手に徐々に力が入る。  薫の中が狭すぎてきついが、苦しいのは薫だろう。腰の動きを緩やかにしていると、薫が小さな声で何か言ってきた。 「ん?」 「島崎さん……大丈夫ですか?気持ちいい……ですか?」  こんな時さえ自分をのことを思い、捧げてくれる薫に自分は何を返せばいいのか。 「うん、すごく気持ちいいよ」  そう言うとほっとした顔を見せた。 「よかった……」 「ちょっとだけ、動くの早くするよ。もういきそう」 「はい、ああっ、ううっ」  腰を持ち上げられ、急な腰のバウンドに小柄な薫は翻弄される。だがそのリズミカルな動きで薫も絶頂が近くなってきた。 「薫、薫。好きだよ愛してる。薫も俺の名前を呼んで」 「……塁さん。塁さん、塁さん。僕も大好きです、愛してます」  繋がったまま、体を倒して島崎がキスをしてきた。中に当たる角度が変わり薫が悲鳴を上げる。 「……あっ!や、やあ。……あ、あああっ」 「──っ」  激しい後ろからの突き上げと、前を扱かれていた薫が先に絶頂を迎え、追いかけるように塁も薫の中で達した。
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