一難去って

7/7
2421人が本棚に入れています
本棚に追加
/282ページ
「倫子、もう一つ、アドバイスいい?」 「ん…!いい!いいに決まってる。」 目を見つめて答えると倫也がフッと笑い、口元を引き締めた。 「倫子の土台を教える事は当然だと思う。だけど宇佐美さんから引き継いだ土台を引き継がせる事に見合わない相手だと思ったら、その時は引くんだ。倫子の大事な物を理解出来ない、そんな人間に倫子が時間を割く必要はない。冷たい言い方かもしれないが、人となりは仕事にも表れると俺は考えている。倫子の良い所を否定する人間を相手にする必要はない。」 目を見つめたまま話を聞いて、倫子はコクンと頷いた。 様々な職種の人に会い、企業の人に会い、マッチングという仕事をして来た倫也には仕事の相談はし易くて、参考になる事をいつも言ってくれていた。 時に厳しく、時に反省する事も言われるが、倫子の事を考えての言葉だといつも感謝していた。 だから素直に相談出来ていた。 残り一週間は頑張る、と答えると、倫也は笑顔で食べようと言い、続ける。 「来週は俺は時間がある。早く帰れる日が多いから買い物はするし、夕食も4日位は引き受けるよ。暫く休みに入るのだからここは仕事を頑張って。荷物、あるなら取りに行くからメールして、会社の前で待ち合わせよう。」 「荷物…そっか。一応、ロッカーも一旦、全部持ち帰った方がいいね。じゃあ、最終日前はどう?金曜日は確か午後会議でしょ?木曜日ならどうかな?」 倫也の予定を思い出しながら倫子が言うと、右斜め上を見て倫也も考える顔をしてから、倫子に目を向けた。 「うん、会議…そうだな。金曜日より木曜日の方が早く終われそうだ。そうしようか。時間は倫子が決めていいから当日、帰る時間メールして。会社の駐車場に車停めてロビーで待ってる。」 「うん!ありがとう。」 言われて倫子は笑顔で返事をした。
/282ページ

最初のコメントを投稿しよう!