お疲れ様の花束

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「これ……?」 不思議顔を沢木に向けると、どうやら昨日の話を聞いた宇佐美が帰りに店に寄り、買って来て渡してと言われたらしい。 「それ、仕事中履くと効果あるって。楽だってさ。」 「嬉しいですけど…前に宇佐美さんにも…締められる感があると……。」 申し訳なく声を出す。 それは前にも宇佐美に薦められて試したが、締め付け感がどうも我慢出来ずに遠慮した物だった。 「それは知ってる、楓から聞いた。けど、会社だけでも1日、我慢して使ってみて欲しいって伝言付き。本当に脱いだ時、楽だからって。俺からはランチ券な。三日分だ。明日から弁当作らないでいいぞ。」 机の上にポケットから出した社食の日変わり定食の券を三枚置かれた。 履いてみますと宇佐美に伝言をお願いして、お礼を言い、そこから今日の仕事の話に変わり、朝イチで頼まれた書類を渡して、忙しく仕事に集中していると午後になり、部長が入って来て、2名の女性が部長の後に続いて歩いて行った。 「はい!ちょっと注目ね!挨拶は終わった人もいると思いますが、本日付けで正式に第一営業部に配属されました。今年は営業補佐二人です。新しい仲間です。よろしくお願いしますね。」 毎年恒例の部長の声掛けにみんなが注目する中、挨拶をどうぞと部長に囁かれて、新人に視線が集まる。 「加藤(かとう)のぞみです。よろしくお願いします。」 「松川日奈子です。よろしくお願いします。」 パチパチ、と派手ではない拍手が起こり、部長が手を叩く。 パン!! という音と共に、静けさが訪れる。 「はい!!では仕事です!昨日の様なトラブルがいつあるか分かりませんから、出来る事は早めにお願いしますね。遅れた場所へはそれぞれ謝罪に行って下さい。加藤さんは藤田の補佐になります。何かあったら周りの先輩になんでも聞いて下さい。松川さんは沢木さんです。数日は花上さんがいますから、今の内に色々聞いておくと良いと思いますよ。では、よろしくお願いします。」 それぞれに分かれて、松川は自然に沢木と倫子の間に置かれた椅子にいつも通り座った。 「じゃ!スローロリス。書類頼んだ!」 松川が座るのを確認してから、鞄と上着を手に、爽やかに沢木が出て行く。 「ちょ!!これ!この書類、白紙で置いて行くなぁぁぁぁぁ!!」 倫子の前にパンフレットに丸を付けられた物と白紙の書類。 本来なら沢木がパンフレットの商品番号を記入して、商品名を記入して数量を記入して、それを見て正式な書類を作る物だ。 つまり沢木は忙しいから記入部分をショートカットした事になる。 「沢木ぃ〜禿げろ。」 と倫子が呟き、座ると、松川が肩を震わせていた。
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