お疲れ様の花束

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「無理は良くないし同じ場所に拘る事は無いと思う。与えられた目の前の仕事がその時の花上の仕事。それを花上らしくする事で周りは子育てに理解も協力もしてくれる様になる。そこを花上の居場所に出来るかどうかは花上次第なんだよ?仕事はなくならない。どんな仕事も大事な仕事。違う?」 どんな仕事も大事な仕事、仕事は裏切らない、昔の宇佐美の言葉を思い出し、倫子はまた涙が出た。 「違いません。お金と仕事は裏切らない。どんな仕事も大事な仕事、小さな部品でも大事な仕事です。」 「うん、私も今もその考えは変わってないよ。お金と仕事は裏切らない。真摯に向き合えば真摯に返って来る。よく言うじゃない?与えられた場所で咲きなさいって。アレってさ、その通りだと思わない?不本意な場所でも道の隅でも咲いたら誰かが見てくれているわ。少なくとも、倫也さんと理也と私は花上を見てる。何処で咲いても花上は綺麗だわ。」 「はい、ありがとうございます。赤ちゃんを無事に産んでそれから復帰は考えます。どんな仕事でもやっぱり働きたいって思うから。宇佐美さんみたいになりたいです。」 「そんな大した人間じゃないわよ?」 クスクス笑いながら宇佐美が何食べる?と聞いて来て、倫子はメニューを指差し、宇佐美を見つめて言葉を発した。 「宇佐美さんは今も綺麗です。入社してからどれだけ助けて頂いたか、今日もありがとうございました。」 照れ隠しで倫子が店員を呼び注文をすると、その様子を見ながら宇佐美は小さく呟く。 「やっぱり花上は私の恩人だわ。」 少し出た涙を拭いて、不思議顔を向けた倫子に何でもないと答えて、宇佐美も注文をした。 二人で仕事の話、子育ての話、会社での倫也の事、沢木の事、お互いの旦那の情報交換をして、楽しく食事をし、食後のジュースを飲んでいると倫也の車が店の駐車場に入るのが見えた。 「倫也さん、今日は20時頃だって…お仕事大丈夫なんでしょうか?」 車を見て倫子が聞くと、宇佐美が笑顔で答える。 「副社長で監査役員だもの。ある程度、時間の自由は効くわ。最近は面接も下が育ってて倫也さんが引き受ける面接は企業間や名前指定が多いの。引き抜きね。数は少ないけど神経は使うでしょうね。登録の面接はもうやってないから、うちの会社では怖い存在になってるわよ?」 クスッと笑って言い、それがアレだものと付け足した。 言われた後ろを振り向くと、蕩ける様ないい笑顔で倫也が歩いて来ていて思わず倫子も笑った。
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