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 ぼくは久しぶりに一人で真っ暗を過ごした。大丈夫。暗いのなんかぼくは怖くないから。  真っ暗になって明るくなったのに彼はまだ来ない。皮膚が湿ってきた。これは朝露だけじゃない。今日は雨が降るぞ。  ぼくの予報はあたるんだ。今日はいつもより明るくならない。ほら、しとしと雨が降ってきた。葉っぱたちが喜んでる。いいね君たちは。ぼくは濡れて、からだが重くなるから雨は嫌いなんだ。あぁ、早く迎えに来ておくれよ。  ぼくがそう思ってると昨日の女の子が傘をさしてやって来た。  「おはよう。うさぎさん。今日は雨が降るってお母さんが言っててわたし、あなたが心配できたの。わたしの家に連れてってあげるわ」  そう言うと。女の子はぼくを抱えて歩きだした。  雨に濡れるのは嫌だから今日はいいけど晴れたらまたさっきのベンチにぼくを戻しておくれよ。彼がぼくを迎えに来たら、ぼくがいなくて彼が困るからね。ぼくも彼といたいんだからね。だって彼だけがぼくとずっといれるんだから。  ぼくの氣も知らないで女の子は楽しそうに雨の中を歩いた。ま、優しい子なんだね。  女の子の家に着くと女の子はお母さんに怒られた。  「勝手に持ってきて。誰かが探してたらどうするの?」  「でもうさぎさん、雨に濡れたらかわいそうだったから」  「うさぎさんはマリアのものじゃないでしょ。明日晴れたら返しに行くわよ」  「・・・はぁーい」  女の子はマリアという名前らしい。マリアは怒られて悲しい顔をした。でもマリア、君には悪いがお母さんの言うようにぼくは彼のものなんだ。今日は君といるから明日には公園のベンチに戻しておくれよ。今日だけはそばにいてあげるから。  子どもの氣が変わるのは早い。お天気なんて一生勝てない。さっきまで暗い顔していたマリアは今は笑ってぼくにおままごとを押しつけている。  「はい。うさぎさん。ご飯ですよ。ハンバーグおいしいですか?にんじんも食べてくださいね」  ぼくが動かないのをいいことにマリアはぼくをあっちに座らせこっちに座らせ、ぼくの口におもちゃを運んで、離して、また運んで。    そうかと思うとぼくを膝の上においてぼくに絵本を読み出した。すっかりぼくのお母さん氣分だ。  (これだから子どもは。ぼくの氣持ちもしらないで。いいよ。今日だけだから付き合ってあげる)
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