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 また暗くなって明るくなった。明日が来たんだ。マリア、今日でお別れだよ。  マリアはお母さんにぼくを公園のベンチに戻すように言われたのに、それを嫌がって泣いた。ぎゃんぎゃん泣いた。でも、お母さんは譲らなかった。マリアが泣き疲れて静かになるまで1時間ほど必要だった。  (仕方ないんだよ。マリア。ぼくと君はずっと一緒にいれないんだから)  お母さんに連れられて渋々マリアはぼくを公園に戻しに行った。ベンチに着くと彼がいた。  「やぁ、お嬢ちゃんが預かってくれていたのかい。探してたんだよ」  「うさぎちゃんはおじさんのなの?」  「そうだよ。僕の友人なんだ。昨日の雨から守ってくれたんだね。ありがとう」  「娘が勝手にすみません」  「いいんですよ。優しい子ですね。助かりました」  「わたし、うさぎちゃんとっても大切にしてたの。おじさんうさぎちゃんをもう離さないでね」  「わかったよ。ありがとう」  そう言って彼はぼくを抱き抱えた。  「ところでお嬢ちゃん、会いたい人はいるかい?」  「あいたいひと?うーんと、あ、天国のお父さん」  「お父さんは天国にいるのかい?」  「そう、お父さんわたしがもっと小さい頃に天国行っちゃったの」  「そうかい、じゃあこの言葉を教えてあげるよ。アスタラビスタ」  「あすたらびすた?」  「そう。アスタラビスタ。意味はまた会う日まで。お嬢ちゃんもきっとまたお父さんに会えるよ」  「ほんとう?おじさん、ありがとう。アスタラビスタ。わたし毎日言うわ」  「うん。こちらこそありがとう」  マリアとお母さんは帰っていった。本当子どもの氣分は変わるのが早い。さっきまであんな悲しい顔してたのにお父さんと会えるとわかったらあんなに笑ってる。  「さぁ、お茶でも行こうか」  彼が言った。ぼくは彼に願う。  (お願いだからぼくを離さないでおくれ。だって君だけがぼくとずっと一緒にいれる人なんだから。どうかぼくを離さないでおくれ。ぼくはもう誰とも別れたくないんだ)    彼とぼくがラウンジでお茶をしていると流れていたテレビのニュースが教えてくれた。  マリアとお母さんが家の近くで車に轢かれて亡くなったそうだ。即死だったらしい。  良かった。苦しまずに逝けただろう。  「アスタラビスタ」  そう言って彼はぼくをまたラウンジに置き去りにした。  ぼくの氣も知らないで。  ぼくはもう誰にも死んでほしくないのに。
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