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 「アスタラビスタ」  そう言って彼はぼくを公園のベンチに置いてった。ぼくはずっと彼といたいのに。ぼくはまた置いてけぼり。ねぇ、お願いだからぼくをもう離さないで。だってぼくはもう......。  「おかあさん 黒いうさぎのお人形さんが一人で座っているよ」  「本当ね でも誰かの落とし物と思うから そっとしときなさい」  五歳くらいの女の子とその母親がぼくを見つけてそんな会話をした。    (見つけてしまったかい。でも、ぼくは彼のものなんだ。ぼくにかまわないで)  「おや まぁ 誰かとはぐれたのかい?早く見つけられるといいねぇ」  次に腰の曲がった老婆がぼくに話しかけてきた。    (おばあさんもかい。うん。ぼくも早く彼に迎えに来てほしいよ)  「なんだぁ お前 捨てられたのか?拾ってやりたいがうちにはもう子どもいなくてなぁ まぁ次まだいたら考えてやるよ」  太陽が隠れてだいぶしてから酔っ払ったおじさんがぼくの手を持ち上げて言った。  (ああ、あなたもね。まったく。お酒の飲み過ぎなんだよ。ぼくにかまわないでくれ)
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