人権発脱法

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人権発脱法

高校に入学して最初の梅雨が訪れようとしていた。 空は重々しい灰色で今にもなにかが落ちてきそうな気配がある。 しかし1年B組の教室は今日もにぎやかで、たとえ空から槍が降ってきても動じないような雰囲気があった。 「恵美~! 昨日の映画見た!?」 教室に入ったあたしに真っ先に声をかけてきたのは親友のエリカだ。 エリカは長くて艶々な髪の毛をひとつにまとめてポニーテールにしている。 こちらへ駆け寄ってくるときチャームポイントのポニーテールが揺れて、光り輝いて見えた。 「見た見た! 正文君の演技かっこよかったよねぇ!」 あたしはすぐに話題に乗っかり、人気俳優の名前を口にする。 昨日テレビ放送された映画は病気がちな彼女を持つ彼氏の話で、彼氏役の正文君のかっこよさが終始押し出されているものになっていた。 ファンとしてはたまらない作品だ。 エリカと2人でキャアキャア騒いでいると、同じクラスの河南聡介(カナン ソウスケ)が登校してきた。 聡介は生まれつき色素の薄い茶色い髪の毛を遊ばせて、少しちゃらいイメージだ。 でもそれは見た目だけ。
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