入社

1/1
15人が本棚に入れています
本棚に追加
/45ページ

入社

毎日残業。それが当たり前だった頃、ようやくとれた休日で久しぶりに友人と過ごしていたときだった。 友人から今の職場をごり押しされたのだ。 「橙子ちゃん、絶対うち合うから働こう! 夜勤できれば誰でも入れるから!」 ブラック企業に勤めては身体を壊し、転職すればブラックな企業にぶちあたる。というループを過ごしていた中、再三心配をかけていた友人から強めの勧誘を受けた。 3回目の転職で居酒屋に勤めたが、入社三か月で業績不振を理由に基本給がアルバイト並みに下がった。手取り14万。残業代は見込みだからない。基本給は契約時20万のはずが、17万近くに下がった。ボーナスもない。バースデー休暇制度は使ったら文句を言われた。転職サイトは二度と信じないと決めている。 社長は会議で、「俺は有給は使ったことがない。」と、有給申請する社員に圧をかけ、「身銭を切って収益を補填した。」と、のたまうアホだった。 セクハラで訴えられ、労基から指導が入れば、男の精神は小学生男子だ。と開き直り、騒ぐ女性社員が意識しすぎだと馬鹿にする上司から、売上が悪かった日の閉店後に「胸がでかいんだから全裸で川でも泳いで客連れてこい。」と言われ、徐々にそういった発言を笑って流しきれなくなり精神的なバランスを崩していたころだった。 もともと、自身がアルコール提供をするカフェ経営をしたい夢を抱きはじめ、修行兼ねて専門性の高い日本酒居酒屋を選んだが、合わなかった。 入社した最初の週、店長が飛んだ。飛んだ。というのは、無断欠勤からの退社。という意味合いだと説明を受けたが、出勤して部長がいたときの衝撃と、店長不在だと爽やかに言われた日は一生忘れない。 そして、退職を決意した上記の店長にぶちあたり、笑顔で「顔はともかく胸がでかいから酔っぱらい連れてこい。」と、閉店後に言われ続けた結果、胸は立派なコンプレックスだ。 ちなみに、セクハラで労基に直接訴えたのは私だ。その指導にたいして、上司から「俺達は小学生男子」発言を頂いた。仕事のやり方自体は尊敬していただけに、残念だったし悔しい気持ちがある。ついていきたかったが、心と給料的な意味合いでついていけなかった。 今思えば、お客様を獲得する術や専門知識の深さはすごかった。 そんな店長よりバイトの方が儲かる。バイトはフルタイムで月に20万稼いでたから。 これ以上は愚痴になるので話を戻すが、旧ヘルパー2級は、祖母の介護の為に所持していただけ。実務経験もないのに知的障碍者という見えない障害や精神疾患の方相手に働く自信は無かった。 が、友人が延々と向いていると言い続けてくれているうちに、なんとなく働ける気がしてその場のノリで応募。 そのままの勢いで面接し、気づけば研修日が確定していた。 夜勤従事未経験 福祉未経験 知的障碍者に対する知識は一般より下(基本的に、身体くらいしか知識をいれないようにして生きているので。) この履歴で雇うほど人が足りない。というか続かない。 人を相手にする仕事の難しさと、人を相手にしているからこそすり減る精神に、その現状に納得もするのだが。 ひとつ言おう。 弊社は条件が良い。給料面も待遇が良い。リフレッシュ休暇に有休、夏、冬の休暇。残業代はしっかり超過勤務でつく。24時間勤務? 休憩大量にあるから平日はともかく休日は楽の極み。 そもそも、勤めたブラック企業の中で一番やばかった会社と比べるわけではないが、仕事を覚えるまでプライベートで食事を友達としにいくのも禁止。というトンデモルールがあるわけではない。 休憩も1時間はしっかりもらえるし、業務の速さによっては多くもらえる。 人相手だからこその好待遇に目がくらんだ。 入社のきっかけはそんなどろっとしたいい加減なもの。 けれど、入社して3年。彼らの可能性ばかり考えるワーカーホリックと化してしまっている。 ついたあだ名はブラック社員。 勤務時間帯なのに働きすぎて休めと言われる。業務前に業務をするなと怒られる。仕事をしに来て仕事しすぎだと言われる。 そんな日々が来るとはこのころは、思っていなかった。
/45ページ

最初のコメントを投稿しよう!