FAKER

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 9月に起きた『いじめ代行アプリ事件』の後、中央警察署から警視庁に引き抜かれた緒方(おがた)愛宕(あたご)。  新人刑事だった彼女の教育係だった先輩刑事の井上(いのうえ)高雄(たかお)は、ここ数日、ある事件に頭を悩ませていた。  事の起こりは3日ほど前。  中央警察署に「人を殺してしまった」と自ら出頭してきた男がいた。  窓口で騒ぐ男を対応していた生活安全賀の婦警が、たまたま刑事課のデスクにいた井上を男の元へ連れて来たのが運の尽きだったのだろう。  泣きながら「俺が悪いんだ。あいつを殺してしまった。捕まえてくれ」と懇願する男に頭を抱えながら、井上は聴取室で話を聞いていた。  男の要領を得ない話にいらいらとしながらも、根気強く話を聞いていると、家を出ていった元妻が荷物を取りに来た際に口論になり殺してしまった――と言うような内容だった。  男の名前は昭島(あきしま)浩二(こうじ)。  中央警察署から徒歩十五分ほどのアパートに住んでいることも聞き出した。 「とにかく、あんたのアパートにいって現場を保存してもらうから」  井上は他の署員に言って、昭島のアパートに向かってもらうことにし、その間に調書を纏めていく。 (――よくある衝動的な事件か。いや、殺人がよくあっちゃ困るがなぁ)  昭島の様子をうかがいながら、井上は現場に向かった署員からの連絡を待った。
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