1人が本棚に入れています
本棚に追加
サヨナラの日のイルメラ
「なあ、覚えてるかよ。俺達が初めて会った日のこと」
「……?なんなの、藪から棒に」
海岸沿いの町が一望できるこの丘が、私達のお気に入りの場所だった。サンドイッチを食べてちょっとしたピクニック気分を味わうのも、喧嘩をしたのも、二人きりで星空を眺めたのもこの場所だ。
二人掛けのベンチが一つあるだけの小さな丘の上。
今日もいつも通り、二人で他愛のないお喋りをしていたはずだった。そう、彼が唐突にそんなことを言いだすまでは。
「今日で丁度三年だなあって思ってよ」
彼はその背中に生えた、コウモリのような黒い羽根をばさりと広げて言った。
「だからさ、イルメラ。全部話すわ……真実を」
こちらを振り向いた彼は。初めて見る顔で、笑っていたのだ。
最初のコメントを投稿しよう!