アイして欲しい僕

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アイして欲しい僕

「ねぇ、僕のことを覚えている?」  そう言ったのは、鏡の中に映っている泣く「私」であった。 ・・・  叡智(えいち)の国ガラジヤ、そこに大賢者アーウィンが存在した。  彼は幾多(いくた)の魔法を生み出し、様々な奇跡を見せた。また、それを個人で悪用せずにいつも民のために使われていた。そんな彼を人々は敬い愛されていた。  しかし、そんな大賢者にも寿命というものが訪れて、少し前に天命をまっとうした。  国が悲しみに包まれた。それと同時に不安の声も大きかった。なぜなら、今は異世界の亜人たちの侵略が世界各地で起こっているからである。  この国は今まで大賢者アーウィンの魔法で巨大な結界を作り上げて、亜人たちの侵略を防いでいた。しかし、彼が亡くなってしまった今その結界が徐々に弱まって来ている。  国の民たちは早く次の結界者を求めた。それは結界の中心地で大賢者アーウィンが学長を務めていた魔法学園ターゲリアの跡継ぎを決めることであった。  魔法学園ターゲリアとは建物全体が結界の核であり、また未来の賢者を育てる学び()であった。  そして、民たちが一番期待している跡継ぎとは、まだ17歳と若いけど心優しくて実力もある大賢者の孫ホメロスであった。  しかし、当の本人から候補として強く名乗り出てはいなかった。
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