拉致

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「山本の?」 そういった徹と呼ばれた男は、 より一層声が低くなった。 「そうです、こいつ使って、やりましょうよ」 私を使う? 何に? やりましょうって、何をするの? 「舐めてんのか、てめぇらは」 徹は、震える私と、 楽しそうに話している私を連れてきた男を見ながらそう言った。 「え?」 「誰がいつ女を拉致ってこいって言った」 「いや、あの、駅の方で偶然見つけて」 「偶然見つけたからなんだ?」 「いや、その···」 なに··· 何がどうなってるの? 私の体を捕まえてくる力が、 だんだん抜けてくるのが分かる。 「どう見てもこの女、関係ねぇだろ」 「でもこの前、晃貴さんが···」 「あ?」 「女でも何でも、火種がほしいって···」 さっきは楽しそうにしていた男は、徹と呼ばれた男に恐る恐るという返事をしていた。 上下の関係。 まさか、自分が怒られると思わなかったのか、少しだけ驚いた表情をしている。
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