707人が本棚に入れています
本棚に追加
これまでとは違うキスのせいか、その余韻で思考がままならない私は「ど、どうしたの?」とどもってしまって。
「もう無いと思ってた」
晃貴は私にしか聞こてないぐらいの小さい声で呟いた。
「無いって…」
「もう真希に触れられないって」
「……」
「俺のこと好きとか…夢じゃねぇよな」
「…夢じゃないよ、本当に…、晃貴が好き」
私はそう言って、首元に腕を回して晃貴を抱きしめ返した。
ああ、この匂いだと、今更思い出す。
爽やかなシトラスの香り…。
出会った当初、あんなにも嫌だった晃貴…。
「…真希、顔見せて」
そう言われて、少しだけ腕の力を緩めた。
私の首筋に軽くキスをした晃貴はゆっくりと顔をあげて、真剣な表情で私を見つめてきた。
出会った当初はいつも爽やかに笑ってたのに。
「なに?」
晃貴の手が、私の瞼に触れて。
「目ぇ酷くなったな、寝てなかったのか?」
目?酷い?
そういえば康二にも同じ事を言われたような…。
隈が出来てるとか何とか…
「あんまり自分じゃ自覚ない…」
「結構酷い」
「あんまり考えないようにしてて、ずっと勉強してたからそのせいかも…」
「何を?」
何を?
最初のコメントを投稿しよう!