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パソコンの乗る机の引き出しから、リョウは深紅の小箱を取り出した。
見間違えるはずのない、あたしの宝物。
その手の中にあるシルバーのリングを見ると、堪えきれずに右目からは一筋の涙が零れ落ちる。
リョウはその涙を親指で拭うと、あたしを腕の中に閉じ込めた。
「やっと、渡せる」
言わなきゃ、聞かなきゃ。
いつか、こんな日が来るだろうって身構えてた言葉。
いざ目の前にすれば情けなく心は震えて口を動かすのが難しい。
身体を離し、涙で濡れる顔を拭いもせずに心を決めた。
「……リョウ、ひとつだけ…お願いが、ある」
「なに?」
「……もし、あたしが死んでもさぁ」
「あぁ」
「フウカを、ずっと守ってくれる?」
「当たり前だろ」
間髪入れぬ言葉はあたしの心に刻まれて、再び涙が込み上げた。
「つぅか、俺が死なせねえよ」
困ったようにリョウは笑うから、ぽろぽろと涙が零れ落ちた。
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