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エレベーターが乾いた音を鳴らせば、開いたドアの先には揃いの服を着た揃いの顔が出迎える。
「おかえり、パパ!」
「おかえり〜っ!」
「ただいま、マハナ、リリカ」
似通った位置にある頭を少し撫でると、ふと、片割れの足元に視線が向かう。
「……リリカ、膝、どうした」
「リリったら転けたんだよ〜!もう思いっきり!」
「でも、その先にカイくん居てね〜大丈夫って、」
「リリ、それ狙いでしょ?」
「もう、ハナちゃんやめてよ〜っ!」
「楽しそうだな……」
「あっ!リョウ、おかえり」
「ただいま」
娘の恋愛事情に圧倒されていると、やっとエマはやって来るので軽く唇に体温を渡す。
「もー、ママとパパはいつまでもラブラブ〜」
「マハナとリリカは宿題の途中!明日、早いのよ」
エマの言葉に、二人は揃って「はーい」と返事をしてリビングへ向かった。
「……あいつは?」
「リビングに居るよ。ご飯用意していい?」
「あぁ、頼む」
頷いて、その扉を開く。
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