エピローグ

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リビングのソファーに座るその男は物音に気付くと振り向き、顔に悪意の無い笑みを乗せる。 「あ。父さんおかえり〜」 「おい、なんだよあれ」 「気付くの遅すぎ。時間もかかり過ぎだよ」 「……お前の性格が悪過ぎんだよ」 「ごめーん、俺、父親似だから」 「本当にリョウそっくりだよね〜。息子ながらビックリしちゃう」 エマはダイニングテーブルに料理を並べ終えたので箸を持つと、そいつは俺の目の前に座り、肘を着いてニヤリと笑った。 「お陰で一日、感傷に浸る暇なんか無かったんじゃないの?」 「お前のおかげじゃねぇよ」 「だったらあと一個サプライズあるんだけど聞く?」 「聞かない」 「俺こないだナツと東京行ったじゃん?」 「聞かないって」 「それでさ、ある会社の見学して」 「……どこだよ」 「社長と話したら、大学卒業したら是非っていうから」 「……お前、まだ二回生だろうが」 「うん。でもそこに就職先決めちゃった」 「……ったく……まあ、うちじゃないなら良いか……」 「当たり前じゃん。父さんの下で働きたくないし」 ……本当に、日を追う事に生意気になってるな、こいつ。 腹立たしい返事を耳で受け流す。
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