エピローグ

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花柄の壁紙、天井から吊り下がる星のオーナメント。 イツキが使う時に内装は少し変えたが、その後産まれた双子の為に再び当時のものに変えた。 フウカは天蓋付きのベッドに腰掛け、その部屋を見渡していた。 「荷造りはもう良いのか?」 「……うん。もう、終わったよ」 隣に腰を落として、以前とあまり変わらないその部屋を同じ様に眺める。 「……あたしね、この部屋を貰った日の事は、昨日の事の様に覚えてる」 「……そうか」 「我慢ばかりしてた毎日で、急にお父さんが甘やかしてくれるから、どうしていいか分かんなくてさ」 「そうだな。……あの日、初めて泣いたな」 「あれからずっとお父さんはあたしに沢山愛情をくれたよね」 大人びたその表情は、昔のエマと瓜二つ。 誇らしい反面、少しの喪失感を隠して口を開いた。 「……フウカ、覚えてるか」 意地悪をして曖昧に伝えると、フウカは静かに頷いた。 「……内緒の約束」
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