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二十年越しの、小さな約束。
フウカは天を仰ぐと、懐かしむ様に目を細めた。
「あのね、お母さんに聞いたんだ」
「なにを?」
「あたしの名前の由来。お父さんとお母さんが出会った日の気候なんでしょ?」
「……まぁ、そうだな」
「だからね、あたしのお父さんは最初からリョウちゃん以外に居なかったんだよ」
「……そうか」
「あたし、お父さんと一緒でずーっと幸せだった」
「……あぁ、父さんも、な」
その答えを聞いて、ゆっくりと頷いた。
あの頃と同じ様に頭を撫でるとフウカは大きな二重の瞳いっぱいに涙を溜めた。
フウカがこの家で過ごすのは……今日で、最後。
「……もし嫌なことがあったらすぐ帰ってこい」
これからきっと、あの約束通り、今まで以上に幸せな日々を過ごすのだろう。
……少し歯痒い気持ちも残るが。
「嫌な事があった時しか帰ってきちゃダメなの?」
「そんなわけねぇだろ。フウカの家はいつでもココだ」
再度、エマより高い位置にある頭を撫でると、似通ったその顔はふにゃりと柔らかく微笑んだ。
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