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「菫花〜、大丈夫だった〜!?」
〝アリス·フラワーガーデン〟のロゴが記載された配送用の軽ワゴンから、一人の女性が飛び出し勢い良く抱きついた。
「菜々子さん、お帰りなさい」
抱きついたまま、オーナー婦人である菜々子さんは私の頭を撫でるので、動くこともままならない。だけど、これも日常の一つでもある。
しかし、私と対面していたその人を見つけた途端、蕩けそうだった笑顔が消え失せ、彼女の眼光が鋭くなる。
「あ、ちょうど。早く帰れ、坊!」
「もう坊じゃないっすよ」
「はっ。あんたなんてまだまだ坊主だよ、菫花口説く暇あったら、次の店回れ!」
目元はっきりとした美人な菜々子さんは、元ヤンならではの迫力で追い返そうとする。一応、彼は開業当初から花の苗や切花を下ろしてくれている大きな農家の跡取りらしいのに、昔ながらの付き合いとは中々に強い様だ。
やれやれといった様子で、新太くんは降参のポーズを取った。
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