9本目 かすみ草

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9本目 かすみ草

* ……なんだろ、この状況。 身体が、熱い。指先までやたらと火照って、車内の生暖かい暖房が煩わしい。 ごうごうと空気を吐き出すワゴンに、私はひとり、取り残されている。いや、取り残されたというよりも、放り出されたといった風が正解に近い。 ……お酒、飲みすぎたのかな。 朦朧とする意識。熱を孕むまぶたが重いし、勝手に息も荒れる。何故か、膝から下に力が入らない。 ……何、話してるんだろ。 窓の外を一瞥すると、そこには車の持ち主である新太くんと……蓮聖先輩がいる。 ……約束でも、してたのかな。 何を話しているのかは全く聞こえないし、そもそも二人はいつの間に仲良くなったのだろう。 頭の奥に浮かぶ数々の疑問は、勝手にあがる微熱が飲み込むから、私は考えるのをやめて目を閉じた。
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