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画面上の笑顔にすら釘付けになること約30秒。
待て待て。その前にこんな卑猥……もとい、恥ずかしい写真よりも別の写真があっただろうに。
……違う、そもそもの問題はそこではない。
「り、りあらさんの方が、機材もカメラマンもセットも、モデルさんだってプロでしたよね?……私は……」
「プロが集まったからいい物が出来るとは限らないの。役者の内側を引き立たせることが出来なきゃただのゴミ」
卯月さんは暖かそうなコートのポケットにスマホを仕舞うと、こう続けた。
「菫花ちゃんの隣が、あいつにとって一番ってこと」
そっか。
その一言が今の私にはとてつもなく嬉しくて、ほくほくとカイロであっためられた言葉のように感じる。
だから、温められた心で「でも」小さく口を開く。
「今度からは、本当にお断りします」
「えぇ!?どうして!?」
……だって、
そろそろ本格的に"そのシーン"に慣れないといけない。
それに……二度も、形に残るものを作り出してくれた。十分だ。
「なんででもです。ありがとうございます」
全部こころの中に押し込めて、笑顔を乗せる。
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