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あれ?……なんだか、おかしい。
頭がぼうっとする、喉の奥が震えて、その奥に控える心臓が、途端に音を鳴らした。
……半分も、飲んでないのに。
細長いグラスに半分ほど残った炭酸の泡の消えた白濁液は、氷が溶けて二層に別れていた。
ちがう、お酒の前に……新太くんが、なんでその事を知っているんだろう。
「菫花さん、大丈夫ですか?」
だけど、目の前には心配そうに顔をゆがめるその人がいる。
しゅん、と、耳としっぽが垂れ下がっている光景が目に浮かんでしまうから「う、うん、大丈夫」疑うことすら愚かな気がして、どくどくと音を立てる脈が一瞬で流し去ってしまった。
……聞き間違えだ、きっと、酔っているからだ。
アルコールのせいだと思って、茶色の液体を一気に飲み干す。
「ん、あ……の、帰ろっか」
「そうしましょう、顔赤いです」
「あ、これは、いつも……」
立ち上がろうとすれば、よろりと身体がふらついた。足に力は入るのに、平衡感覚を失ったみたいだ。
「大丈夫ですか?」
「……っ、」
咄嗟に新太くんが支えてくれると、触れた部分に感じるそれは、嫌悪というよりも、別の感覚だった。
「あ、ごめんなさい、つい」
「い、いいの、平気」
おかしい、本格的に身体が熱い。触れられた二の腕に、変な熱を帯びる。……おかしい。
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