1069人が本棚に入れています
本棚に追加
本格的に、逆上せた様に頭が覚束無い。
店を出ても千鳥足の私は新太くんに支えられたままだった。真冬の冷たい空気が肌を刺すのに身体は下腹部を中心に、熱を帯びていくばかりで、息も荒れてきた。
「男、随分平気になりましたね」
少しだけ低くなった男の人の声に、耳が熱を孕むので、何度かうん、と頷く。それだけで、脳が揺さぶられるから直ぐにやめて、幼子みたいに足を動かすことに集中する。
「従順に、飼い慣れさせられてるんですね」
「……え、」
「なんでもないです。家まで送りますね」
家、わたしの家……じゃなくて、いまから、先輩の……。
脳裏に彼の顔が過ぎると、意識を集中させるように頬を抓る。
「……あ、の、新太くん、……近くで、いい」
黒いワゴン車のドアをスライドさせる彼に向かって言えば、「近く?」と、新太くんは首を傾げる。
ぼんやりとした頭で、同じ言葉に首を傾げて、彼の家を思い浮かべた。
部屋のレイアウト、匂い、家具、まぶたの裏に張り付くのに、そこへ道のりは頭からすり抜けたみたいに思い出せない。
「……どこ、だっけ……」
手繰り寄せることが出来ない。
最初のコメントを投稿しよう!