9本目 かすみ草

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本格的に、逆上せた様に頭が覚束無い。 店を出ても千鳥足の私は新太くんに支えられたままだった。真冬の冷たい空気が肌を刺すのに身体は下腹部を中心に、熱を帯びていくばかりで、息も荒れてきた。 「男、随分平気になりましたね」 少しだけ低くなった男の人の声に、耳が熱を孕むので、何度かうん、と頷く。それだけで、脳が揺さぶられるから直ぐにやめて、幼子みたいに足を動かすことに集中する。 「従順に、飼い慣れさせられてるんですね」 「……え、」 「なんでもないです。家まで送りますね」 家、わたしの家……じゃなくて、いまから、先輩の……。 脳裏に彼の顔が過ぎると、意識を集中させるように頬を抓る。 「……あ、の、新太くん、……近くで、いい」 黒いワゴン車のドアをスライドさせる彼に向かって言えば、「近く?」と、新太くんは首を傾げる。 ぼんやりとした頭で、同じ言葉に首を傾げて、彼の家を思い浮かべた。 部屋のレイアウト、匂い、家具、まぶたの裏に張り付くのに、そこへ道のりは頭からすり抜けたみたいに思い出せない。 「……どこ、だっけ……」 手繰り寄せることが出来ない。
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