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先輩だ、先輩が居る。
途端に呼吸が戻って、夜の視界が鮮明になる。
先輩は私から新太くんを引き剥がすように、ワゴンの外へと連れ出した。
帰るのだと、動かしたくない身体に何とか指示を出していると、急に車がピー、と鳴いた。
「ま、待って」
「ちょっと乗ってて。すぐ帰ろ」
閉ざされていくドアが、完全にピタリと閉まると先輩は背を向けた。
……なに、話してるんだろう。その前に、なんだろ、この状況。
指先まで火照って、車内の生暖かい暖房が煩わしい。
……お酒、飲みすぎたのかな。
まさか、こんなに自分がアルコールに弱くなっているとは思わなかった。
窓の外を見ても、二人が何を話しているのかは全く聞こえないし、そもそも二人はいつの間に仲良くなったのだろう。
最早、考えるのをやめて、大人しく目を閉じた。
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