9本目 かすみ草

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先輩だ、先輩が居る。 途端に呼吸が戻って、夜の視界が鮮明になる。 先輩は私から新太くんを引き剥がすように、ワゴンの外へと連れ出した。 帰るのだと、動かしたくない身体に何とか指示を出していると、急に車がピー、と鳴いた。 「ま、待って」 「ちょっと乗ってて。すぐ帰ろ」 閉ざされていくドアが、完全にピタリと閉まると先輩は背を向けた。 ……なに、話してるんだろう。その前に、なんだろ、この状況。 指先まで火照って、車内の生暖かい暖房が煩わしい。 ……お酒、飲みすぎたのかな。 まさか、こんなに自分がアルコールに弱くなっているとは思わなかった。 窓の外を見ても、二人が何を話しているのかは全く聞こえないし、そもそも二人はいつの間に仲良くなったのだろう。 最早、考えるのをやめて、大人しく目を閉じた。
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