1本目 向日葵

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「では、お会計を」説明を終えて業務に移れば、お金を渡す際トレーに乗せた指先が、微かにその指先に触れる。 その瞬き程度の瞬間で、息が荒れ、肩がすくみ、慌てて手を引いた。 「っ、す、すみません……!」 「いえ、大丈夫ですか?」 「……は、はい、失礼しました」 「またお願いします」 「……お待ちしています」 丁寧にお辞儀をして深く腰を折ると、足音が耳の奥から消えていく。 一瞬でこめかみから流れた汗が頬を伝い、鼻の先から、スローモーションのように落ちた。 まあるい雫が、 グレーのコンクリートが打ち付けられた店内の床に、ポタリと落ちた。 『かわいい、かわいい』 一瞬のあいだに、破れたみたいに心臓から嫌な血流が流れてくる。 手が震える。喉の奥が震えて、は、は、と、息が一瞬で奪われる。 『かわいい、かわいい』 もう一雫が鼻の先に到達する。 そのまま膝を曲げて、背中を丸めて自分を抱きしめるようにぎゅっと小さくなる。 『枯らさないように、してあげる』 耳の奥で蠢く声は、脳髄を侵食する。黒い影が視界の四隅から押し寄せるので、右の小指を守るピンキーリングに触れた。
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