1本目 向日葵

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大丈夫、大丈夫。自信を持て、もう大丈夫。 あれは過去のこと、全部、今起きた事じゃない。 あんな人達ばかりじゃない、あの人が教えてくれた。 両手でぎゅっと自分を抱きしめて耐えていれば 『───菫花(すみれ)』 少し掠れた声が甦ると、過去の残像が霧を晴らした。 …………通い慣れた、帰り道。 何時だって、あの人と私の間に障害物は無くって 何時だって、私の歩幅に合わせてくれて 何時だって、手を伸ばせば届く距離にいた。 スラリと背の高い彼の、カフェオレ色の髪の毛は、太陽に浴びれば、夏に咲く花のような色を帯びるから。 『向日葵みたいだね』 一度だけそう例えれば、普段から無表情な彼は、くっと薄い唇を持ち上げ、ニヒルに笑った。 『〝木蓮〟なのに?』 物悲しい笑顔が私の脳内を埋め尽くせば、たちまち指先の震えが小さくなり、喉元に息が蘇る。 「…………先輩…………」 『あなただけを、見つめる』 何時まで、見つめれば この声は、あなたに届くのだろう。
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