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____いつからだろう。
私達の関係は、本当に穏やかで、安定していて、家族みたいに居心地良くて。
漠然と、それは揺るぎなく続いていくものだと思い込んでいた。
このマンネリも、刺激のなさも、恋から愛に変わっている証拠だと、そう信じて疑わなかった。
「……陽ちゃん?」
これはその罰?それとも自然の摂理?
早朝に帰宅した私の目に飛び込んできたのは、玄関に転がっているリボンがついたウッドヒールの見知らぬサンダルと、1LDKの狭い部屋の中、一際場所をとっているセミダブルベッドですやすや眠っている男女だった。
……ドッキリ?なんて考える程の心の余裕もない。
だらしなく口を開けて熟睡しているのは、同棲三年目の彼氏、陽太郎。
そして彼に抱きつくようにして、どこに出しても恥ずかしくないような綺麗な寝顔を披露しているのは、私の職場の後輩、2歳年下の光里ちゃんだ。
……何故、彼女が家に。
いや、わかってる。理由はもう一目瞭然だけどさ、何故よりによって後輩なの?
いつから二人は知り合ってた?
なんて冷静に考えてる場合じゃないよね。
『トラブルが起きた時こそ落ち着いて冷静に』という先輩の教えが、こんな時にまで発動してしまうとは。
とにかく、とにかくこの状況をどうにかしないと。
まずは、……起こす?
「んん……」
寝返りをうった陽太郎。
はだけたふとんから裸体が露になって、時差が生じていた心がようやくミシッと音を立てる。
手からすり抜けたエコバッグが間抜けな音を立てて落下して、納豆や卵のパックが床に転がった。
その音で、陽太郎は目を覚ます。
「…………っ美月!?」
ガバッと起き上がり青ざめる陽太郎。
心底驚き、困惑した表情の彼の姿をこれ以上見ていられなくなって、私は家を飛び出した。
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