寄り添うということ

9/22
692人が本棚に入れています
本棚に追加
/132ページ
 病院に着いた頃には、もう佐伯さんは昏睡状態で、とても話ができるどころではなかった。  冷や汗と悪寒、嫌な動悸と震えに耐えながら、煌が到着するのを待った。  『容態の詳しい説明は、まずご家族に』という医師の言葉が、余計に不安を増長させる。  どうか。どうか。  両手をお腹の前で握りながら、祈るように佐伯さんの寝顔を見つめ続けていると、勢いよく病室の扉が開いた。 「ばあちゃん!!」  血相を変えて息を荒くさせている煌と、青ざめている蓮沼さん。  二人に会うのは久しぶりだったけれど、微笑み合うような状況ではなく、皆表情は固かった。   「ついていてくれてありがとう、美月」  それでも私を気遣って、必死に眉を下げてくれる煌。  側にいたのに気づくのが遅れてしまったこと、何もできなかったことの罪悪感で、胸が締め付けられて言葉がひとつもでなかった。  心配そうに佐伯さんを見つめる煌を見ていられなくて、情けなく目を伏せる。 「煌、先生の説明受けにいかないと」 「……ああ」  蓮沼さんに促される煌。病室内に緊張感が漂う。  それぞれが、それぞれの覚悟をしているようにも思えた。 「……美月も一緒に来てくれない?」 「私も……?」 「一緒に聞いてほしい」  不安げに瞳を揺らす煌に、私は頷いた。
/132ページ

最初のコメントを投稿しよう!