父と娘 その1

1/1
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/3ページ

父と娘 その1

「トゲナシトゲアリトゲトゲ、という昆虫がどうしてこんな名前になったか、という理由だがな」  お風呂上がりの私がテレビを楽しんでいると、いままで番組に何の反応もしなかったお父さんが口を開いた。 「まず、『トゲトゲ』と名づけられた昆虫の一種である『ハムシ』がいた。しかし、その『トゲトゲ』の中に、トゲのない種類が見つかったんだ。だから、彼らは『トゲナシトゲトゲ』と呼ばれるようになった。しかし、さらなる発見で『トゲナシトゲトゲ』でもトゲのある個体が見つかったんだ。それが『トゲナシトゲアリトゲトゲ』という奇妙な名前の虫なのだ」 「へえ……」  私は一応、うなずいてみせ、テレビの中でいまも、 「トゲあるの? ないの? ないと思ったら……やっぱりある! って、あるのないの、どっちなの、教えてよ、ねえ!」  とボケ続ける、ハライチの澤部さんは何も悪くない、そう強く思ったのだった。
/3ページ

最初のコメントを投稿しよう!