探し物三重奏

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 東シナ海で訓練航海中の海上自衛隊の艦隊の旗艦のブリッジ。艦長と副長が並んで窓の側に立ち、会話を交わす。 「ところで艦長、この副次任務というのは何です?」 「そうか、君はこの海域の任務は初めてだったな。不審な生物がいないか、訓練がてら調査しろというわけだよ」 「不審な生物? ひょっとして、11年前に海に逃げたというアレですか?」 「その通りだ。当時の調査によれば、かなり大きなサイズに成長している可能性があるらしい。もっとも、その兆候はずっと見つかっていないがね。とっくの昔に、大きな魚のえさになったんじゃないかな」 「なるほど、しかし自衛隊としては捜索をやめてしまうわけにもいかない、と。気の長い探し物ですね」  大きなヘッドセットを耳に当てているソナー監視員が突然大声を上げた。 「ソナーに感あり! 潜水艦? いや、違う。正体不明の巨大な何かが水中にいます!」  艦長が駆け寄って緊迫した口調で尋ねる。 「位置は?」 「本艦の直下! 推定全長、50メートル」 「クジラか? いや、それにしても大き過ぎる」  次の瞬間、艦全体が下からドンと突き上げられる衝撃を受け、ブリッジの全員が床に放り出されそうになった。  水しぶきが上がり、ブリッジの窓の外に「それ」が半身を海面の上に現した。西洋のドラゴンのような頭にやや長い首。ゴツゴツとした黒い肌に、銀色の細い毛が短く伸びている。  その巨大な生物は艦隊の真ん中を悠々と泳いで行く。向かう方向にあるのは日本列島。  艦長は通信士に横須賀基地への直通回線を開かせ、マイクを握り締めて叫んだ。 「こちら第9護衛隊群。巨大生物を視認! 繰り返す、巨大生物を視認にて発見!」
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