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三日後、多香子が教室で授業を受けていると、突然空中からバリバリと轟音が聞こえて来た。それはまっすぐこちらへ向かって来た。
全ての教室の窓に授業中にも関わらず生徒が鈴なりになって、その音の発信源である、プロペラが二つ両翼に着いた航空機を見つめた。男子生徒が騒ぐ。
「あれ、ティルトローターってやつじゃねえ?」
「そうだ、オスプレイV22だぜ」
「じゃあ米軍か?」
「いや、自衛隊のマークが付いてる。おい、マジでこっちに向かって来てるぞ!」
オスプレイは学校の上空まで来ると、プロペラの角度を変え、ヘリコプターの様に、ちょうど空いている運動グラウンドに着地した。
迷彩服姿の自衛隊が二人降りて来て、駆け寄って来た校長たちと対峙した。校長はぶるぶる震えながら、隊員たちに問いかけた。
「い、一体何事ですか? ここは高校、それも授業中ですよ!」
隊員の一人が敬礼しながら答えた。
「緊急ですので、失礼はご容赦下さい。こちらの2年生に神崎多香子さんという女子生徒がいらっしゃるはずです。その方を至急、保護する必要が生じました」
「はあ、確かにそういう生徒はおりますが、しかし保護者の同意がありませんと……」
「それならここにいますよ」
オスプレイの中からそう声がして、ショッキングピンクのスカートスーツに身を包んだ女性が降りて来た。彼女はパスポートを開いて、校長の目の前にかざした。
「私がその保護者です」
校舎の二階の窓からその光景を見ていた多香子は思わず叫んだ。
「ママ! あれ、あたしのママだ!」
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