想い出のオルゴール

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想い出のオルゴール

「ねぇ、覚えてる?」 「覚えてるよ。お父さん、このオルゴールを最期まで大切にしてたよね」  あれから、二十年が経っていた。私はいつの間にか二十歳を過ぎていた。  私の記憶に今も残ってる。お父さんがいつも大事そうに持っていた目の前のオルゴール。そのオルゴールから音楽が流れている。なにかに包み込まれるような、そんな感覚になる。もしかしたら、お父さん聴いてるのかな、とふと思った。 「このオルゴールね、結婚祝いにって二人で決めて買ったものなの。だからかな? いつも大切にしてくれてたのよね」  お母さんは語るように話し始めた。その姿は優しくもあり、どこか切なさを感じた。きっと、お母さんは今もお父さんの事を愛しているんだろうなと思った。 「(かなで)ももう少ししたら結婚するのよね。オルゴール、奏にあげる」 「え?」  お母さんにとってお父さんとの記念のオルゴールだと思っていたから大切だと思っていた。それなのに……。でも、お母さんは嬉しそうに笑っていた。 「いいの? お父さんが大切にしていたものだよね……」 「奏が持っててくれたらお父さんもきっと喜ぶと思うわ」  そうなのかな。その意味を聞こうとはしなかったけれど、お母さんは安心感を抱いているように見えた。 「ありがとう」  私は小さな声で感謝の言葉を口にした。想い出のオルゴール。この先もずっと奏でてくれますように。
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